【要件①】専ら派遣ではないこと
まず、専ら派遣とは、「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的」にすることです。では、どういうケースであれば専ら派遣になるのでしょうか。
(1) 特定の者にのみ事業を運営していて、それ以外の者に対して労働者派遣を行っていない
(2) 関係派遣先(グループ企業等)への派遣割合が8割を超える場合(60歳以上の定年退職者は除く)
また、上記以外では「他社の依頼を理由なく断る」「他社に対して一切の広告宣伝をしていない」なども専ら派遣として勧告される原因になるので注意が必要です。
この要件については”許可条件として付するもの”なので、許可取得後の事業運営で留意しなければいけません。
【要件②】派遣労働者の雇用管理を適正に行えること
雇用管理が適正に行えるかどうかは、厚生労働大臣の定める基準を満たす必要があります。
具体的には、次の(1)と(2)の2項目になります。
(1) 派遣労働者のキャリア形成を支援する制度を有すること(厚生労働大臣が定める基準を満たすものに限る)
キャリア形成支援制度の基準とは、以下の5項目です。
①派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めていること
②キャリアコンサルティングの相談窓口を設置していること
③キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続きが規程されていること
④教育訓練の時期・頻度・時間等
⑤教育訓練計画の周知等
上記の各項目には、「教育訓練は、すべての派遣労働者を対象に有給かつ無償で行うこと」「入職時訓練は必須で最初の3年間は毎年1回以上かつフルタイムなら8時間以上の実施」等々。さらに細かい条件があります。詳しくは「労働者派遣事業関係業務取扱要領」をお読みいただくか、当事務所までお問合せください。
(2) (1)のほか、派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うための体制が整備されていること
具体的には、以下の4項目です。
①派遣元責任者として雇用管理を適正に行い得るものが所定の要件及び手続きに従って適切に選任、配置されていること
②派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者があらかじめ選任されていること
③派遣元事業主が欠格事由等に該当しないこと
④労働安全衛生法第59条に基づき実施が義務付けられている安全衛生教育の実施体制を整備していること
派遣元責任者は「成人に達した後3年以上の雇用管理の経験を有すもの」という要件がありますが、職務代行者は特に要件はありません。ただし、非常勤の取締役など、緊急時に職務代行ができない場合は相応しくありません。
【要件③】個人情報管理の措置が適正に行えること
(1) 個人情報適正管理規程を定めていること
(2) 個人情報を収集する際は、本人から直接収集し、又は本人の同意の下で本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段で収集すること
【要件④】事業を的確に遂行できる能力を有すること
(1) 財産的基礎要件を満たしていること
・資産(繰延資産及び営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した額(基準資産額という)が2000万円以上であること(事業所が1箇所増えるごとに、+2000万円)
・基準資産額が負債総額の7分の1以上であること
・現預金の額が1500万以上あること(事業所が1箇所増えるごとに、+1500万円)
(2) 組織的基礎に関すること
・派遣労働者数に応じた派遣元責任者が配置されていること(派遣労働者100名につき派遣元責任者1名)
・派遣事業に係る指揮命令の系統が明確であり、混乱の生ずるものではないこと
(3) 事業所に関すること
・事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上であること
・風俗営業等が密集するなど事業の運営に好ましくない位置にないこと
(4) 適正な事業運営に関すること
・事業停止命令を受け、その停止期間中ではないこと
・労働者派遣事業が他の事業の会員の獲得、宣伝等の目的として利用するものではないこと
・登録制度等を採用している場合において、いかなる名義であっても手数料に相当するいものを徴収するものではないこと
・名義貸しではないこと